コーヒームーン マンガ

〈西洋芸術×ループもの〉牡丹もちと『コーヒームーン』分断された世界をどう生きるか?


Amazonにオススメされて、何気なくポチったのですが、すごく面白いです、このマンガ。

ちりばめられている「西洋絵画」のモチーフや、巨匠の画家たち、絵画技法。

それらを「ループもの」として昇華させている、なかなか類を見ない作品ではないでしょうか。

そして、作者の牡丹もちと先生は、非常に西洋芸術に造詣の深い方であることが、作品から伝わってきます。

絵画に詳しくなくても楽しめますが、ちょっと元ネタを知っていると、もっと楽しめる作品だと思います。

といっても自分は西洋絵画に関してはかじった程度なので、拾いきれないネタや間違った考察もあると思います。ご了承ください。

以下、単行本2巻までのネタバレを含みます。


ギュスターヴ・カイユボット『パリの通り、雨』

1巻収録の第1話から、いきなり西洋画オマージュが出てきてます。

サブタイトルの「私は」が小さく載せられ、ぐにゃりとうねった「COFFEE MOON」が印象的な見開きのページです。

おそらくこのシーンは、ギュスターヴ・カイユボットの『パリの通り、雨』のオマージュでしょう。

『コーヒームーン』は、この絵よりもより暗く、陰影の濃い印象を受けますね。

ピエタの抱える閉塞感だったり、作品内で描かれていく、あらゆる「分断」を感じさせるような、重たい雰囲気を感じます。

この見開きで心を掴まれた読者も多いのではないでしょうか。


ルネサンスの三大巨匠

「ミケランジェロ」「ラファエロ」「レオナルド・ダ・ヴィンチ」の三人は、一般的にルネサンスの三大巨匠と呼ばれています。

そして『コーヒームーン』の物語には、この三人が深く関係していると思われます。

ミケランジェロの代表作は彫刻の『ピエタ』

ラファエロはおそらく「駄苗」→「ダナエロ」

レオナルド・ダ・ヴィンチは「レオナ・ウィンチ」ですね。

この他にも、人名はおそらく全てに元ネタがあります。

キアロは「キアロスクーロ」(明暗)←カラヴァッジョも用いたとされる技法。

グリザイユもモノクロの技法。

キアロのお父さんの容姿はサルバドールダリ? 『記憶の固執』という作品もありますね。

ニケは「サモトラケのニケ」←ナイキのやつ

アドルフ・シーレはおそらく「エゴン・シーレ」?

「盆体知里」「ボンティッチェリ」は「サンドロ・ボッティチェッリ」

アントニオは、ダヴィンチの師匠?

「儀巣他部」は「ギュスターヴ」、「訓覇」は何でしょうね?

キアロが読んでいた本は、ギュスターヴ・ル・ボン『群衆心理』ですね。


猿猴月を取る?

猿猴(えんこう)月を取る、という慣用句があります。

猿猴とは、お猿さんのこと。

「水面に映った月を掴もうとしたが失敗して、そのまま水におぼれてしまった猿」といったところです。

この慣用句が示す意味は、「「分不相応」な理想に手を伸ばしたために、身の破滅を引き寄せた」ということです。

「分不相応」は、『コーヒームーン』に度々登場することばですね。

一例を挙げると、2巻収録の第7話のラストに、

「忘れないで ピエタ…」「分不相応の幸せには必ず代償がつきまとうことを」「今日あなたは必ず その笑顔の代償を払うことになる…」

とあります。

2巻収録の第8話にて「コーヒームーン」の意味が、キアロの口から説明されましたが、あくまでそれは「表側の意味」なのではないでしょうか。

月にはいつも、みえない裏側があるように。


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